2011年04月29日
高齢出産と鍼灸

女性の社会進出や晩婚化が影響しているのだろう。高齢出産は「妊娠」と「分娩」に関して統計的にはリスクが高いが、若いうちの出産に比べて相対的に高リスクであるというだけで大半は正常な妊娠・分娩を辿っている。ただ体力的には若いときより劣っているのでその分ケアが必要になる。
出産予定日を40日後に迎える37歳の会社員。二週間前から両足にむくみが出てきた。1週間前に電話で相談があり自宅でのお灸治療を続けられていたが、産休に入ったとのことで来院された。この方は妊娠された時から東洋医学の参考書を読み、健康管理に努められていた。妊娠初期からずっと順調だったが、産休に入る前に仕事の引継ぎで忙しくなったことが原因かもしれない。
むくみの他に体重増加のせいか右足の付け根が重心がかかると少し痛むそうだ。むくみは妊娠後期になると母体の心臓や腎臓に負担がかかるせいではないかと思われる。むくみに対しては手足の少陰経の刺絡とお灸をして自宅でも1週間続けてもらうことにした。右足の痛みには最圧痛点にやや深めの鍼を刺入した。翌日電話で痛みはよくなったと連絡いただいた。
運動としては床や畳の雑巾がけをお勧めした。妊娠中は安静が大事な時期もあるがそれを過ぎれば、適当な運動は安産のために必要不可欠と思う。昨年は二名の高齢出産の患者さんがいたがお二人とも正常分娩で元気な赤ちゃんを出産された。この方もそれに続いて欲しい。

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2011年04月25日
メニエール病(めまい、難聴、耳鳴、耳閉感)

メニエール病の本態は内耳の内リンパ液が過剰になった内リンパ水腫といわれている。内リンパ液が過剰になる原因は不明で一般的な治療は利尿剤(イソバイド)を使うことになる。その他病状により血液循環改善剤、ステロイド剤、ビタミンB剤、精神安定剤などの薬物治療が行なわれる。
メニエール病を発症して1年6ヶ月になる30歳代女性。この方は典型的な発病ではなく最初は吐き気と嘔吐から始まり、消化器の治療をしていたがやがて耳の症状が出て耳鼻科で診察をうけてメニエール病と診断された。耳鼻科の治療を受けて1年経つが、ひどい症状は治まっているが吐き気と体がふわふわする浮動性のめまいが残っているとのこと。
どうして内リンパ水腫が発生するかは不明だが発症にはストレスが関係していることははっきりしている。メニエール病と鑑別しなければいけない病気として外リンパ瘻、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、突発性難聴、脳腫瘍などあるので最初に的確な診断を受けなければならない。症状がある程度落ち着いてきたら鍼灸治療も併用して体調のバランスをとることは有効と思う。
この女性の治療は自律神経の調整を頭部と手足の井穴で行い、内臓の働きをよくする為に背中の兪穴にお灸をした。治療前後の腹診ではみぞおちの圧迫感が軽減していた。手足のツボ4ヶ所に自宅で施灸して1週間後に経過を知らせてもらうことにした。

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2011年04月21日
脂漏性湿疹の鍼灸治療

病名もはっきりせず鎮痛剤と作業療法をしているが、いまのところ改善の兆しが見えない。下肢に触れたり少しでも動かそうとすると激痛が走り、右足にはまったく触れず、治療部位は両手、左足、頭からツボを選んだ。
頭のツボを探していたら、母親が「頭に脂漏性湿疹が出ている」と言う。おそらく風呂に入れず洗髪が充分できないことと、ストレスが原因と思われた。脂漏性湿疹は乳児の間は自然によくなるが大人になると難治性になるといわれている。この湿疹は3回の治療の後ほとんど治った。アレルギーの一種と考え副交感神経を抑える治療をした。
足の痛みに関しては原因がよく分からない。器質的な疾患ではなさそうだが、心の問題とも決めかねる。痛みの治療の専門医「加茂淳」先生に相談したら、「身体表現性障害のなかの疼痛性障害」ではないかとのアドバイスを得た。先生曰く「心の問題にしてしまわず、痛みをとる治療をやるように」とのこと。まだはっきりとした効果がでないが、可能性があることをひとつひとつ確かめていき何かきっかけを見つけたい。

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2011年04月16日
脳卒中後遺症の鍼灸治療

1年半前に仕事中突然「脳出血」で倒れた37歳の男性が後遺症の治療で来院された。脳卒中の基礎疾患として高血圧や動脈硬化があるが、この方は健康診断では何も問題なくいま思えば仕事のストレスと1日三箱の喫煙が原因だったのではとのこと。
2週間意識不明であったが意識がもどってから必死のリハビリを始め、いまは麻痺側の足に装具をつけ杖を突いて歩けるようになっている。絶対無理だと言われた自動車の運転も10ヵ月後に改造車に乗れるようになった。その努力に敬服する。現在も慈恵医大第三病院に転院してリハビリと経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)を受けている。
鍼灸治療に期待することは麻痺側の手足の動きがスムーズになることや唇や頬の動きがよくなり発音が明瞭になること。初めての治療だったので幾つかの治療法と予想される効果の現れ方や時期の説明をした。ほとんどの場合麻痺側は皮膚表面が冷たく感覚も鈍くなっている。手や足の指のわずかな動き具合も治療効果の判断になる。
今日は手足の井穴刺絡と頭部の鍼、もうひとつ眼鍼(眼窩に刺す鍼)を試してみた。手足の動きはあまり変わらなかったが温かくなった。麻痺側の頬が少しよくなったように見えたので「どうですか」と尋ねたら、「あっ、しゃべりやすい」と仰る。2~3回の治療で効果的なツボを探し、リハビリと一緒に自宅でお灸や円皮針の刺激を加えたら一層効果的だと思う。

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2011年04月11日
パソコンと眼精疲労

近年、会社はもとより家庭でもパソコンが普及して一日のうちかなりの時間パソコンと向き合うことになっている。人の目は各自、自然にピントが合いやすい距離があり、その距離に近い範囲は目に負担が少ない。およそパソコンは50cmと近距離で見ているので遠くにピントが合いやすい人はより目に負担がかかることになる。最近流行のレーシック手術は遠くが見えるようにする手術でその反作用で近くを見るには目の疲れがひどい。
目の疲れは「目の症状だけでなく、頭痛や肩こり、吐き気やめまい、首や背中の痛みなどの原因」になる。ピントの調節は毛様体筋の働きだが、この筋肉をリラックスさせることが大切でパソコン操作中は10分に1回程度、画面より遠くに焦点を移すことを心がけたい。近視の人は眼鏡の度数を落としたり、パソコン専用の眼鏡を作ることも対策になる。
若い人はコンタクトレンズを使っている人が多いが、コンタクトレンズは目が乾く「ドライアイ」になりやすい。パソコン操作中は意識が集中して交感神経が高まり涙や唾液の分泌も少なくなるのでまばたきの回数が減らないように気をつけたい。余裕があれば1時間に1回蒸しタオルで目を温めると血流がよくなり涙の分泌が増える。
鍼灸で目の疲れをとる方法は幾つかあるが治療前後で明らかな変化を実感できる。患者さんの言によれば「眼鏡のレンズをクリーニングした後」のようと表現される。直接的には頭のツボや顔面部のツボを使うが交感神経緊張症であれば自律神経の調節が効果的である。自分で簡単にできる自己治療として目の周りの円皮針を貼ることもいい。

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2011年04月08日
低線量でも注意したい放射線被曝

この数日NHKの報道が変わってきた。以前は「1年に100mSvまで安全」と言っていたが「一般人の安全な被曝量は1年に1mSv」と言うようになった。やっと正しい数字を報道するようになった。1年100mSvとは100人被曝すると将来0.5~1人発がんリスクが増える量である。
それをどのように評価するか。安全という専門家は被曝がなくても100人のうち50人は癌にかかる。それが0.5~1人増えても大差ないと考えているのだろう。しかし日本の人口12000万人に当てはめると60から120万人癌が増えることになり決して無視できる数字ではない。
放射線による健康被害は「ただちに症状が表れる急性障害」と「数ヶ月から数十年後に表れる晩発障害」がある。年100mSv以下の低線量被曝でもリスクがあることは知らせしっかりした対策を立てるべきではないだろうか。
ICRP(国際放射線防護委員会)は1990年に一般人の線量限度を年1mSvと勧告した。我々はこの数字をもとに自らの放射線対策を考えた方がいいと思う。放射線量が分かるホームページや風向きが分かる気象庁のホームページを参考にするといい。年1mSvとは1時間になおすと概ね0.1μSv。年齢、性別、外出時間、内部被曝量なども考慮されるべきだがとりあえずは1時間0.1μSvと覚えておこう。
放射線被曝に関心もたれた今、医療被曝も考えてみたい。日本はCT機器が世界で一番普及している国で無駄な検査も多いと聞く。適切な医療のために必要な検査はやるべきだがCTは被ばく線量が多いのでむやみにやるべきでなく、リスクと利益をよく考えてするべきだ。厳密に医療被曝を管理するには「お薬手帳」に準じて「医療被曝手帳」を自分で作り放射線検査を受けた場合に、医師や技師に線量を記入してもらうようする。子供にはぜひやっていただきたい。

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2011年04月06日
塩分制限と血圧

心臓や肺に異常がないか、貧血はないか、薬は合っているのか循環器の専門医の診察を受けた方がいいと思われたので紹介した。その結果高血圧が長期間続いたことにより心臓に負担がかかり弁の機能が少し悪くなっていると診断された。薬はARBと利尿剤の合成薬に変更された。
血圧は徐々に下がり二週間前に来院された時は上125・下80、ちょうどいい数値になっていた。本人曰く「転院してから塩分を抑えた食事を続けている」とのことだった。塩分を控えて悪いことはないので続けるようにお勧めした。
さて昨日来院の際、血圧を計ると98・56と低くなりすぎている。家庭で計っても上110以下、下60くらいとのこと。血圧が低くなりすぎると、必要なところに血液が廻らなくなりめまいや立ちくらみ、稀に失神を起し危ない。
副交感神経を抑えることにより血圧を上げる治療をして110・65になった。塩分制限を止めた方がいいのかとお尋ねになったが、薬が効きすぎている可能性があるのですぐに医者を受診するようお話した。理想は薬の中止だが、心臓の弁や心臓肥大があるので注意深く経過を診ていく必要がある。鍼灸は自律神経を介して血圧を上にも下にも調整する。

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2011年04月02日
大地震後の不眠症

このようなとき自律神経は交感神経が亢進して不眠を始め、各自の弱いところ(感受性の高いところ)にさまざまな症状を引き起こす。胃痛、耳鳴、不整脈、動悸、頭痛なども同様である。ストレスがかかり続けると器質的疾患やうつ症状に発展する。被災地の方々の心の痛手はいかばかりか、専門的な対応が急がれる。
しばらく仕事を離れることがベストだが、短期的には睡眠薬を服用した方がいいと思う。長期に続けたり服薬量が次第に増えていくようなら注意が必要で、安全性は高いがどの睡眠薬でも依存性や習慣性はゼロではない。
本来、人間は一日25時間の体内時計を持っていて生活リズムで24時間に合わせている。不眠症対策として生活習慣を少し変えてみることを勧めた。①早起きをして一定時間太陽の光を浴びる。②朝食をしっかり摂る。③日中できるだけ体を動かす。④夕食を早めに済ませる。⑤暗くなったら明るいところをなるべく避ける。⑥交感神経の緊張を抑えるお灸を手足4ヶ所にやる。
お若い方なので交感神経の緊張が治まり体内のリズムが戻れば、薬に頼らなくてよくなるだろう。今日は多摩川住宅の周辺と野川沿いを自転車で走ったが、ソメイヨシノがちらほら咲き始めていた。世の中重苦しい雰囲気に包まれているが、今年も桜の季節が廻って来た。
写真の桜は「ソメイヨシノ」より少し早く咲く「ジンダイアケボノ」神代植物公園で3分咲き。

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