2014年02月26日
座骨神経痛に対する井穴刺絡と知熱感度測定、シーソー現象
何年振りかで赤羽幸兵衛著『知熱感度測定による針灸治療法』を読み返してみた。一般の方はご存じないかもしれないが、赤羽幸兵衛先生(1885年~1977年)は昭和の鍼灸界に偉大な足跡を残された。
赤羽先生の業績で何が革命的だったのかと言えば、その当時(今でもそうかも知れないが)ほとんどすべての鍼灸師が客観的な診断基準を持たず自己本位の施術をしていたのだが、そこに井穴の知熱感度を測定することにより経絡の左右差を客観的数値で表す診断方法を提唱したことである。
この診断方法で取穴すると少数のツボで経絡の左右差が調整され患者の訴えがよくなるという。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」式に全身ハリねずみのように鍼を刺している治療もあるが、鍼灸治療の醍醐味は効くツボ「この一穴」をどうして見つけるかということにある。浅見鉄男先生が成された「井穴刺絡療法」は客観的な診断が可能で、一穴の治療効果をその場で確認できる優れた治療法である。
右の臀部が痛む70歳男性 経絡的には胆経か膀胱経。経絡テストではなくこの両経の知熱感度測定をしてみると膀胱経に左12/右45と明らかな左右差がある。右膀胱兪に皮内鍼、右F4井穴刺絡をして再度知熱感度測定すると左9/右10と左右差が解消し痛みも80%よくなる。
赤羽幸兵衛先生と言えば「知熱感度測定」の他に「皮内鍼」「シーソー現象」という言葉も有名である。今日の診療の中で、左腕を横に挙げると肩の前面が痛いという訴えに対し右肩の対称点に4番鍼を15mm刺鍼して軽く雀啄、痛み取れる。もう一例、立位で腰を右に側屈させると左臀部の痛みに対して右の対称点に4番鍼20mm刺鍼して雀啄、これもその場で痛み取れる。どちらもひどい痛みではなかったが「シーソー現象」を利用した治療。
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